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シモキタボイス シンポジウムの記録

【Symposium3】 8月14日(火)14:00-15:30

「演劇は下北沢に何をのぞむのか?」――演劇界におけるザ・スズナリ喪失の意味

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会場から

会場風景

: 今回の再開発をテーマにした作品を書いてみたいなというようなことがないかなと。

宮沢 : 再開発って大抵活気を失うんですよね。駅からここまで来る間、色んなノイズを身につけてやってくる。それは、例えば、昔見たテント芝居であるところからこう劇場に入るまでに色んなことをやってて、それはそれで面白いなと思ってたんだけど、それ、下北沢そのままなんだなと思う。スズナリの前によくわからない人たちが立って並んでたりするじゃないですか。そうするともうなんか、僕は最初のころゾクゾクするような感じがあって。そうゆうの全部なくしちゃって、すんなり駅から入り口までが何もひっかかりがないまんまやってきちゃうってことがいいのかどうか。それが街の活気を失うものになってしまうんだったら、ホントにやだ。
だけど、ある種の製作部門にとって、そういった整備された土地とか、整備された街なんかは使いやすいのかもしれない。それは舞台そのもの、作品そのものに成功しないんだってことですね。こと下北沢そのものを開発すると、表現よりもいろんなことが成功されないんだっていうことを僕は演劇人として感じてます。

野田 : そうゆう意味では、もうすでにそうゆう問題意識を作品化されてますよね。

宮沢 : そうですね。排除されてるものがあるわけじゃないですか、この街の中から。さっきの、小田急が地下に潜った後のところは全部喫煙所でも、いいんじゃないかなと。

野田 : なるほど

宮沢 : あと、スターバックスは排除。

(場内拍手)

野田 : どうですか、ヘビースモーカーのケラさん

ケラ : 大賛成です

ペーター : 17年前、私28才だった。我ら東ドイツの演劇人、みんな集まったんですよ。その時も演劇人いっぱい舞台の上に立ってたんです、それは10月15日だった。その時は東ドイツでいっぱいデモがあって、じゃあ大きなデモを作ろうっていう話が出たんです。二週間の間に作って、500万人来ました。そして、5日後、ベルリンの壁壊れた。守るより壊しちゃったね、国を。そのおかげで今私ここに立ってるんですけど、でもとりあえずそのパワーがあったんですね。あの時も色んな話が出た。やっぱり今我ら何かやらなきゃいけない、というように。多分二ヶ月間は本多劇場とか全部閉めれば?

坂手 : ストライキ?

ペーター : そう。この街は演劇なしでどうなるかっていう。

坂手 : なくなったら、どうすんだっていうね

ペーター : ごめんなさい、経済的に大変になる。でもとりあえず、我らがいるかいないかということはやっぱり大きなポイントです。非常に厳しいとわかってますけど。それだけ言いたかった。

(場内拍手)

◆司会者の感想

下北沢は長い間「演劇の街」と称されることが多かった。しかし、その街を大きく変えてしまう道路計画について演劇界が何かしらの発言や議論をしたことは一度もなかった。その意味において、このシンポジウムは画期的なものであった。

出席いただいたパネリストも演劇界を代表する錚々たる顔ぶれであった。柄本明さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん、坂手洋二さん、本多一夫さん、宮沢章夫さん、流山児祥さん、それに「Save the 下北沢」共同代表の下平憲治さんに専門家としてご参加いただいた。

いずれの方も多忙を極める中、「ザ・スズナリを守るためならば」と二つ返事で出席してくださったことを振り返ると、今でも感謝に堪えない。

さて、当日のシンポジウムは、主題にあるように「演劇は下北沢に何をのぞむのか?」ということを軸に進められた。とはいえ、お歴々にはザ・スズナリを失いたくないという思いはあるものの、下北沢の街全体のこととなると、どうであろうか、というのが個人的には訊いてみたいところであった。そこで紹介も早々に切り上げ、単刀直入に「道路がザ・スズナリをかわして通ることになったらどう思われますか?」という問いを投げかけてみた。じつはこのシンポジウムを企画するに当たって、副題に〜演劇界におけるザ・スズナリ喪失の意味〜と付けはしたものの、パネリストにザ・スズナリへの思いばかり語っていただくのもどうかと思っていた。もちろん、パネリストの方々にザ・スズナリへの固有の感情を語っていただくことは興味深いことではあったが、それは他面、ザ・スズナリという街の一部に限定してしまう、懐古的な話し合いに終始するリスクがあった。このシンポジウムで確かめたかったのは、演劇界におけるザ・スズナリ喪失の意味に留まらず、下北沢の道路問題と演劇界の接点、非接点、あるいは未来に向けた互いの関わり合いの可能性についてだったのだ。

さて、先の問いを投げかけたところ、お歴々の顔には困惑の色が見られた。これはもっともなことであるとも思われた。唐突に問われて、道路計画が自分の表現行為にどのように影響するのか具体的にイメージしにくいこともあっただろうし、ザ・スズナリ以外の劇場群は再開発後もすべて残ることを考えると、道路計画の賛成反対の旗幟を鮮明にするほどの根拠が見当たらない、というのが正直なところではなかったかと察せられる。とはいえ、時間と考察が進むにつれ、パネリスト各人、それぞれの立場と言葉で、この問題への提言や決意表明をしてくれたことはありがたいことであった。詳細はレポートを参照していただきたいが、総じて言うと、今の段階では、道路反対に大きなエネルギーを注ぐことはできないまでも、ザ・スズナリを壊してほしくないという思いに軸足を置きつつ、下北沢をより演劇的に、文化的に活性化することで街全体を守ることにつなげていけるのではないか、そういう明るい展望を各パネリストとのあいだで共有することのできた、たいへん意義深いシンポジウムであった。

(野田)

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