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シモキタボイス シンポジウムの記録

【Symposium4】 8月14日(火)16:30-18:00

「文化と生活と街と・下北沢」――歴史が生む磁場

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街に溶け込んでいる映画館

大木 : かつて下北沢には映画館は4つありました。「シネマアートン」よりずっと以前の話です。今のダイエー、ピーコック横の銀行、北口のゼンモール、トーアフィットネスのところにありました。かつて、映画文化に下北沢っ子は染まっていたはずなんです。それぞれポルノっぽい映画だとか、日本の名作映画、ハリウッドの活劇映画など、映画館ごとに色分けがされてそれぞれやっていましたが、次第にテレビに押されて閉館へとおいやられた。それで、「下北沢にまた映画館を」ということで先代から引き受けたのが?「シネマアートン?」です。岩本さん、下北沢で映画館を始めて何年目ですか?

岩本 : 3年目です。先代もあわせたら9年。先代は美術デザイナーと衣裳の人たちで、自分たちの関わった映画を上映する場所がほしいという理由でスタートしました。自分たちが何かを作って、それを見せたりして楽しむ、そういうことがセットで考えているのが、新宿、渋谷にない特徴です。喫茶店みたいなものも映画館の中に作って、「下北沢らしいね」なんて言われたりもします。

大木 : 岩本さんの「シネマアートン」や「スズナリ」、本多さんの持っている劇場は、下北沢の狭い街の中にあってもツーンとしていなくて、街の生活と一緒に、街のにおいを壊さない形で存在している。知的欲求、創造欲求が働いていて経済欲求が先行しているわけではない。施設が街に溶け込んでいるのが特徴だと思うんですが、監督、何かお話をいただけませんか?

廣木 : 演劇がこの街で育ったのは、本多さんがちゃんと育てようと思ってやってきたからでしょう。映画の世界では、大きい映画会社が映画人を育てるのをやめた時期があります。僕らみたいにピンク映画の助監督から出てきた映画監督は、みんながみんなシネコンでかかるような映画を作りたいと思っているわけではないと思う。僕が作った映画をどこでかけようかと考えたとき、都内でとても少ないです。それは、「お客さんが入らない」という事情があるからです。演劇も最初のころは客が入らなかっただろうけど、今はいろいろな劇団が人気があって、お客さんが入っています。人も集まり才能も集まって、出会いがあって大きくなっている。これはすごく重要なことだと思います。

岩本 : 経済的なことを考えると、今、映画会社は映画をつくらなくて、テレビが作っています。うちにもたまに「『ハリーポッター』やってますか?」なんて電話がありますけれど、「申し訳ございません、やっていません」というしかないんですが(笑)、映画はそれだけではないですよね。

廣木 : やったらどうなるだろうね(笑)。

岩本 : 今は映画館でなくても、ネットやカフェでも映像は流せます。これから、映画の見せ方は多様化していくでしょう。そうすると、映画館は需要がなくなるかもしれないという気もします。

大木 : そういう悲しいことを言っちゃいけませんよ。

岩本 : いや、世間的にはですよ。大木さんのところでもCDではなくLPを回したりするじゃないですか。

大木 : うちは「LADY JANE」というジャズ・バーをやっていますけど、いまだにLPレコードを流しています。

岩本 : 同じ音楽でも素材によって受ける感覚は違うものですよね。映画館のいいところは、大してつまらないギャグが出たとしても、誰かが少し笑ったら、ざわざわっと伝播して大きな笑いにつながるときがあるところです。

大木 : 映画の大きな特徴は、家族でテレビを見るのとは違って、50人、100人、1000人なり、全くの他人が同時に一つの空間で時間を共有することですよね。

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