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シモキタボイス シンポジウムの記録

【Symposium1】 8月13日(月)16:30-18:00

「下北沢で、運動を語る」――「再開発反対」のいま

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守りたいものって何?

鈴木 : 「何かを残したいから守る」って考えたとき、下の世代に残したい下北沢のよさって一体何ですか?

山崎 : 私が店をやり始めたとき、「下北沢じゃなきゃ嫌だ」というのではなかったの。その頃はお金がなくても店がやれるような店舗が見つかったし、「ネバー」や「ぐ」、「ラカーニャ」とかはみんな同世代だけど、そういうことが出来るのが下北沢だった。若い人が頑張って一国一城の主でやっているような、「何かをやりたい」が形に出来る街であることがなくなるのが嫌です。

鈴木 : その残し方の問題についてずっと考えているんだけど、学校で相合傘をみんな机に書くじゃないですか。それを消して、また他の人が彫って。つまり人は入れ替わっていって、自分が作った相合傘は残せないが、相合傘を書ける場所はずっと残っている。そのときに、あえてこういう聞き方をすると、今やっている運動は、「相合傘を消さない」なのか、「相合傘を書く場所を消さない」なのか、どっちなんですか。

久山 : 「書く場所を消さない」です。

鈴木 : でもそれが、「相合傘を消さない」に見えているんだとすれば、「書く場所を消さない」ことを伝えるための方法論って、必要になると思うな。

仲俣 : 「セイブ・ザ・下北沢」は、何かから街を「守る」という運動、つまり「下北沢の古い良さを残せ」という活動だと思われがちです。でも本当は、「街が自然に変化する余地を残せ」ということでしょう。それに下北沢って「どこまでが下北沢か」が決まっていない。仮に街の真ん中にビルが建っても、周辺の安いところに店が出来ていければいいのかも。

鈴木 : 場所のバイブレーションが作動して、地元っぽいこじんまりとした雰囲気が残ればいいけど、そうならないことも十分考えられる。だからこそ、「何を守りたいのか」をはっきりさせた方がいいと思う。「相合傘を書く壁」を守りたいなら守りたいで、それをどーんと用意してやるとよいのではないか。

久山 : 運動をやっている方としては「相合傘を書く場所」を守りたい、という意思ははっきりしているけれど、運動は個人の人がやるのではなくいろいろな人が一緒にやるものなので、共通のメッセージにすることが難しいんではないでしょうか。

鈴木 : えっ、運動は個人がやるものでしょ。でも組織としての運動体がやるときのメッセージが問題なんだよね。俺は日本人的な「右にならえ」はどうしてもいやなので、バラバラならバラバラのままでいいのではないかと思う。運動は個人でやるものだし、個人でやるものがたまたま集合するのならいい。昔、民衆と行政との力の差が相当あったときには、みんなでまとまらないといけなかったし、みんなの利害も一致していたと思うのだけど、今は違うよね。だから、今は行政は敵ではなく巻き込むもの。みんなで団結しなきゃ、というのを解除してはじめて、下北沢らしい運動が出来るように思う。

山崎 : 私たち、「団結しなきゃ」とはまったく言っていないですよ。「下北沢商業者協議会」も、すごくゆるい集まりだし。だからこそ、510店舗も集まって、区長とも会えた。区長と会ったときは、下北沢のことを何にもわかっていないとわかったんだけど。だから、私はそのあとこの問題から目を背けてはいけないと思いました。

曽我部 : 僕は、そういうことが一番問題なんだと思う。運動のやり方よりも、こういうとこが中心なんじゃないのかなあ。

鈴木 : 俺がなぜやり方にこだわるかというと、合法性と正義は違うから「今の政府に正義がない」と思うのなら従わなくていいというのが民主主義の大前提で、そういう方向に持っていくときの一番のやり方は、やはり人がたくさん集まることだと思うからなんです。

仲俣 : 熊本区長にしても石原都知事にしても、「下北沢を再開発しよう」と強く思っているわけではないはず。官僚の事なかれ主義と利害関係の中で再開発が突然浮上して、誰もコントロールしていないように見える。そういう状況の中で何をやればいいのかが、これからの問題ですね。ところで、久山さんはどうしてセイブにかかわったんですか?

久山 : もともと文京区の大塚に住んでいて下北沢の街が好きで、ときどき服を買いに来ていました。ある日、「下北沢が危ない!」と書かれたセイブのチラシを店で見かけて、「やばい!」と思ってセイブにかかわるようになりました。

仲俣 : そのあと、下北沢に引っ越してきたんですよね?

久山 : ある日、飲み屋で隣になったおじさんに「お前、住んでもいないのに反対運動なんてやるな!」と言われた。「じゃあ、引っ越してやるよ!」と言って引っ越してきました。

鈴木 : それだ!それを前面に押し出せばいいんじゃない?「下北沢に引っ越そう」運動なんて、誰もやったことがなくて、最高にかっこいい「運動」だと思う(笑)。

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